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宮沢賢治《よだかの星》

发布时间:2017-02-13 16:24:15来源:现代教育阅读量:0


よだかの星

夜鹰之星


宮沢賢治


 よだかは、実にみにくい鳥です。

夜鹰是一种长得很丑的鸟。


 顔は、ところどころ、
味噌みそをつけたようにまだらで、くちばしは、ひらたくて、耳までさけています。

它的脸上就像涂了豆酱一样满是花斑,嘴巴扁扁的,一直裂到了耳朵那里。


 足は、まるでよぼよぼで、
一間いっけんとも歩けません。

它的腿脚也不灵便,走不了几步路。


 ほかの鳥は、もう、よだかの顔を見ただけでも、いやになってしまうという
工合ぐあいでした。

  其他的鸟,一看见它就生厌。


 たとえば、ひばりも、あまり美しい鳥ではありませんが、よだかよりは、ずっと上だと思っていましたので、夕方など、よだかにあうと、さもさもいやそうに、しんねりと目をつぶりながら、首をそっ
へ向けるのでした。もっとちいさなおしゃべりの鳥などは、いつでもよだかのまっこうから悪口をしました。

  比方说吧,云雀虽不算是什么美丽的鸟,但它却自认为比夜鹰要美丽多了,所以黄昏时一瞧见夜鹰,便露出极其厌恶的神情,执拗地闭上眼睛,将脸扭向一边。而那些多嘴多舌的小鸟,更是明目张胆地奚落夜鹰:


「ヘン。また出て来たね。まあ、あのざまをごらん。ほんとうに、鳥の仲間のつらよごしだよ。」

  “哼!又出来了。瞧呀,瞧它那丑样,真给我们鸟类丢脸。”


「ね、まあ、あのくちのおおきいことさ。きっと、かえるの親類か何かなんだよ。」

  “瞧它那张大嘴,准是癞蛤蟆的亲戚。”

【日语爱好者enjoyJP】

 こんな調子です。おお、よだかでないただのたかならば、こんななまはんかのちいさい鳥は、もう名前を聞いただけでも、ぶるぶるふるえて、顔色を変えて、からだをちぢめて、木の葉のかげにでもかくれたでしょう。ところが夜だかは、ほんとうはたかの兄弟でも親類でもありませんでした。かえって、よだかは、あの美しいかわせみや、鳥の中の宝石のようなはちすずめの兄さんでした。蜂すずめは花のみつをたべ、かわせみはお魚を食べ、夜だかは羽虫をとってたべるのでした。それによだかには、するどいつめもするどいくちばしもありませんでしたから、どんなに弱い鳥でも、よだかをこわがるはずはなかったのです。

就是这么一种状况。唉,若我不是夜鹰而是鹰的话,这群乳臭未干的小毛鸟,恐怕一听到鹰的名字,就会吓得浑身发抖,缩着身子藏到树叶后去了吧?可是,夜鹰既不是鹰的兄弟,也不是鹰的亲属,而是美丽的翠鸟和被誉为“鸟中瑰宝”的蜂鸟的哥哥。蜂鸟吮吸花蜜,翠鸟捕食小鱼,而夜鹰则是捉羽虱吃。因为夜鹰没有锋利的爪子,也没有锋利的嘴巴,所以不管多么弱小的鸟,见到它都不会害怕。


 それなら、たかという名のついたことは不思議なようですが、これは、一つはよだかのはねが
無暗むやみに強くて、風を切ってけるときなどは、まるで鷹のように見えたことと、も一つはなきごえがするどくて、やはりどこか鷹に似ていたためです。もちろん、鷹は、これをひじょうに気にかけて、いやがっていました。それですから、よだかの顔さえ見ると、かたをいからせて、早く名前をあらためろ、名前をあらためろと、いうのでした。

既然如此,它又为何取了一个与鹰有关的名字呢?其原因之一是夜鹰的翅膀强悍有力,当它迎风飞翔的时候,恰似雄鹰翱翔。再者是它的叫声尖利,听上去也有些像鹰。不用说,鹰对此十分介意,很不自在。每当见到夜鹰的时候,鹰便耸起肩膀,吼着叫它“赶快给我改名字!赶快给我改名字!”


 ある夕方、とうとう、鷹がよだかのうちへやって参りました。

一天傍晚,鹰终于来到了夜鹰的家里。


「おい。居るかい。まだお前は名前をかえないのか。ずいぶんお前も
はじ知らずだな。お前とおれでは、よっぽど人格がちがうんだよ。たとえばおれは、青いそらをどこまででも飛んで行く。おまえは、くもってうすぐらい日か、夜でなくちゃ、出て来ない。それから、おれのくちばしやつめを見ろ。そして、よくお前のとくらべて見るがいい。」

“喂,夜鹰在家吗?怎么还没把名字改过来呀?你也真是厚颜无耻。你跟我品格截然不同,我可以在蓝天上任意翱翔,而你呢?只有在阴天或是黑夜里才能出来。还有,你好好看看我的嘴巴和爪子!再瞧瞧你自己的!”


「鷹さん。それはあんまり無理です。私の名前は私が勝手につけたのではありません。神さまから下さったのです。」

  “鹰大哥!这不太可能啊!我的名字不是我自己随便起的,是上帝赐给我的呀!”

「いいや。おれの名なら、神さまからもらったのだとってもよかろうが、お前のは、云わば、おれと夜と、両方から借りてあるんだ。さあ返せ。」

  “不!我的名字才可以说是上帝赐给的。你的嘛,是用了我的‘鹰’字和‘夜’字拼凑起来的。还是趁早还给我!”


「鷹さん。それは無理です。」

“鹰大哥,这很难办啊!”


「無理じゃない。おれがいい名を教えてやろう。
市蔵いちぞうというんだ。市蔵とな。いい名だろう。そこで、名前を変えるには、改名の披露ひろうというものをしないといけない。いいか。それはな、首へ市蔵と書いたふだをぶらさげて、私は以来市蔵と申しますと、口上こうじょうを云って、みんなの所をおじぎしてまわるのだ。」

“这不难办。我这就给你起个好名字,你就叫‘市藏’吧!嗯,就叫‘市藏’好了。怎么样?这个名字不赖吧。不过,改名得举行一个改名仪式。听见了吗?要在脖子上挂个写着‘市藏’的牌子,到各家各户去行礼说:‘我叫市藏。以后请大家叫我市藏吧!’”


「そんなことはとても出来ません。」

“这,我做不到啊。”


「いいや。出来る。そうしろ。もしあさっての朝までに、お前がそうしなかったら、もうすぐ、つかみ殺すぞ。つかみ殺してしまうから、そう思え。おれはあさっての朝早く、鳥のうちを一
けんずつまわって、お前が来たかどうかを聞いてあるく。一軒でも来なかったという家があったら、もう貴様もその時がおしまいだぞ。」

“不,没什么做不到的。就这么定了。如果到后天早上你还没有照我说的去做,那我可就要把你掐死!要掐死你的哟,还是好好考虑考虑吧!后天一大早我会挨家挨户去打听你是否来过。倘若有一家没有走到,你就死定了!”


「だってそれはあんまり無理じゃありませんか。そんなことをする位なら、私はもう死んだ方がましです。今すぐ殺して下さい。」

“这怎么可能啊!如果非要我那么做,我情愿去死。您现在就把我杀了吧!”


「まあ、よく、あとで考えてごらん。市蔵なんてそんなにわるい名じゃないよ。」鷹は大きなはねを
一杯いっぱいにひろげて、自分のの方へ飛んで帰って行きました。

  “我看你还是好好想想吧!市藏这个名字不错嘛。”鹰说罢,张开宽大的双翼,朝自己的巢穴方向飞去了。


 よだかは、じっと目をつぶって考えました。

  夜鹰闭目沉思。


(一たいぼくは、なぜこうみんなにいやがられるのだろう。僕の顔は、味噌をつけたようで、口はけてるからなあ。それだって、僕は今まで、なんにも悪いことをしたことがない。赤んぼうのめじろが巣から落ちていたときは、助けて巣へ連れて行ってやった。そしたらめじろは、赤ん坊をまるでぬす人からでもとりかえすように僕からひきはなしたんだなあ。それからひどく僕を笑ったっけ。それにああ、今度は市蔵だなんて、首へふだをかけるなんて、つらいはなしだなあ。)

  (我为何这么惹人讨厌呢?大概是因为我的脸上像抹了豆酱一样,嘴巴咧到耳朵那里的缘故吧!可是我从未做过任何坏事呀。有一回,绣眼鸟的小宝宝从窝里掉下来时,是我把它送回到了窝里。可是绣眼鸟妈妈却像是从强盗的手里夺回婴儿似的,一把将小宝宝从我的怀中夺了过去,还狠狠地嘲笑了我一番。现在又要在我的脖子上挂个“市藏”的牌子,实在是叫人痛心。)


 あたりは、もううすくらくなっていました。夜だかは巣から飛び出しました。雲が意地悪く光って、低くたれています。夜だかはまるで雲とすれすれになって、音なく空を飛びまわりました。

  周围渐渐地暗了下来。夜鹰从自己的鸟巢里飞了出来。乌云低垂,恶作剧一般地闪着亮光。夜鹰紧贴着云层默默地盘旋着。


 それからにわかによだかは口を大きくひらいて、はねをまっすぐに張って、まるで矢のようにそらをよこぎりました。小さな羽虫が
幾匹いくひきも幾匹もその咽喉のどにはいりました。

  然后,它忽然张开了大嘴,舒展双翅,箭一般地从空中滑过。数不清的小羽虱被它吞进了嘴巴。


 からだがつちにつくかつかないうちに、よだかはひらりとまたそらへはねあがりました。もう雲は
鼠色ねずみいろになり、向うの山には山焼けの火がまっ赤です。

  就在身体即将触到地面时,夜鹰一纵身,又敏捷地升到了天空中。云层已经变成了暗灰色,对面的山火把四周映得通红。


 夜だかが思い切って飛ぶときは、そらがまるで二つに切れたように思われます。一
ぴき甲虫かぶとむしが、夜だかの咽喉にはいって、ひどくもがきました。よだかはすぐそれをみこみましたが、その時何だかせなかがぞっとしたように思いました。

  当夜鹰尽全力振翅飞翔时,天空如同被刀劈成了两半。一只独角仙闯进了夜鹰的喉咙,拼命地挣扎。夜鹰一口就把它吞了下去。吞下去的时候,夜鹰觉得后脊梁有一股寒气掠过。


 雲はもうまっくろく、東の方だけ山やけの火が赤くうつって、
おそろしいようです。よだかはむねがつかえたように思いながら、又そらへのぼりました。

  云变得漆黑一片,唯有东方的天际仍被山火映得通红,令人产生一种恐惧感。夜鹰胸口有点闷,又一次飞向了高空。

 また一疋の甲虫が、夜だかののどに、はいりました。そしてまるでよだかの咽喉をひっかいてばたばたしました。よだかはそれを無理にのみこんでしまいましたが、その時、急に胸がどきっとして、夜だかは大声をあげて泣き出しました。泣きながらぐるぐるぐるぐる空をめぐったのです。

  又一只独角仙闯进了夜鹰的喉咙。如同在抓挠夜鹰的喉咙,用力扑腾。夜鹰拼命将它吞了下去,心头猛然一颤,不禁放声痛哭起来。夜鹰一边哭,一边在天上一圈一圈地盘旋。


(ああ、かぶとむしや、たくさんの羽虫が、毎晩僕に殺される。そしてそのただ一つの僕がこんどは鷹に殺される。それがこんなにつらいのだ。ああ、つらい、つらい。僕はもう虫をたべないで
えて死のう。いやその前にもう鷹が僕を殺すだろう。いや、その前に、僕は遠くの遠くの空の向うに行ってしまおう。)

  (啊,我每天晚上都要吃掉那么多的独角仙和羽虱。而我,这次却要被鹰吃掉了。这是多么痛苦呀!痛苦死了,痛苦死了!我再也不捉虫吃了,我情愿就这么饿死——也许还没饿死,就先被鹰吃掉了。不行,我得趁鹰还没下手,飞往遥远的地方。)


 山焼けの火は、だんだん水のように流れてひろがり、雲も赤く燃えているようです。

  山火像流水一样,四处蔓延,云层也如同被烧着了一般通红通红。


 よだかはまっすぐに、弟の川せみの所へ飛んで行きました。きれいな川せみも、丁度起きて遠くの山火事を見ていた所でした。そしてよだかの降りて来たのを見て云いました。

  夜鹰径直朝翠鸟弟弟家里飞去。美丽的翠鸟此时也已经醒来,正在观望远处的山火。见夜鹰飞来,便问:


「兄さん。今晩は。何か急のご用ですか。」

  “大哥!晚上好。你有什么急事吗?”


「いいや、僕は今度遠い所へ行くからね、その前
一寸ちょっとお前にいに来たよ。」

  “没有,我这次要出远门了,临行前来看看你。”


「兄さん。行っちゃいけませんよ。蜂雀はちすずめもあんな遠くにいるんですし、僕ひとりぼっちになってしまうじゃありませんか。」

  “大哥,你不能走啊。蜂鸟也离我那么远,就剩下我孤单一人了。”


「それはね。どうも仕方ないのだ。もう今日は何も云わないでれ。そしてお前もね、どうしてもとらなければならない時のほかはいたずらにお魚を取ったりしないようにして呉れ。ね、さよなら。」

  “实在是不得已啊,你今天不要再说什么了。还有,除非在不得已的时候,你不要再随随便便捉鱼了。好,再见。”


「兄さん。どうしたんです。まあもう一寸お待ちなさい。」

  “大哥,你这是怎么了?你等等。”


「いや、いつまで居てもおんなじだ。はちすずめへ、あとでよろしく云ってやって呉れ。さよなら。もうあわないよ。さよなら。」

  “不行,我早晚都要走的,你替我问候蜂鸟吧,再见!我以后不会再来了,再见吧!”


 よだかは泣きながら自分のお
うちへ帰って参りました。みじかい夏の夜はもうあけかかっていました。

  夜鹰哭着飞回了自己的巢里。短暂的夏夜已经微露曙光了。


 
羊歯しだの葉は、よあけのきりを吸って、青くつめたくゆれました。よだかは高くきしきしきしと鳴きました。そして巣の中をきちんとかたづけ、きれいにからだ中のはねや毛をそろえて、また巣から飛び出しました。

  凤尾草的叶子吮吸着晨雾,青翠欲滴地摇曳着。夜鹰嘎嘎地放声鸣叫着。随后,它将鸟巢里面打扫干净,又把浑身的羽毛整齐地梳理了一遍,然后就飞离了鸟巢。


 霧がはれて、お日さまが丁度東からのぼりました。夜だかはぐらぐらするほどまぶしいのをこらえて、矢のように、そっちへ飛んで行きました。

  雾散了,太阳从东方冉冉升起。夜鹰忍受着刺眼的阳光,如离弦之箭一般地向东方飞去。


「お日さん、お日さん。どうぞ私をあなたの所へ連れてって下さい。
けて死んでもかまいません。私のようなみにくいからだでも灼けるときには小さなひかりを出すでしょう。どうか私を連れてって下さい。」

  太阳啊太阳!请把我带到您的身旁去吧。即使把我烧死,我也心甘情愿。尽管我的样子丑陋无比,但燃烧时总会放出一点光芒吧!请您把我带走吧!


 行っても行っても、お日さまは近くなりませんでした。かえってだんだん小さく遠くなりながらお日さまが云いました。

  夜鹰奋力地飞啊飞,可就是接近不了太阳。相反,太阳却越来越小了。


「お前はよだかだな。なるほど、ずいぶんつらかろう。今度そらを飛んで、星にそうたのんでごらん。お前はひるの鳥ではないのだからな。」

  “你是夜鹰吧?难怪你如此痛苦。今天晚上,你飞上天去问问星星吧。因为你不是白天的鸟类。”


 夜だかはおじぎを一つしたと思いましたが、急にぐらぐらしてとうとう野原の草の上に落ちてしまいました。そしてまるで
ゆめを見ているようでした。からだがずうっと赤や黄の星のあいだをのぼって行ったり、どこまでも風に飛ばされたり、又鷹が来てからだをつかんだりしたようでした。

夜鹰本想给太阳鞠个躬,但身子突然晃了起来,最后掉到了荒野的草地上。夜鹰如同进入了梦境,它觉得自己好像一会儿在星空里飞翔,一会儿被风刮得到处飘荡,一会儿又好像身体被鹰死死地抓住。


 つめたいものがにわかに顔に落ちました。よだかは
をひらきました。一本の若いすすきの葉からつゆがしたたったのでした。もうすっかり夜になって、空は青ぐろく、一面の星がまたたいていました。よだかはそらへ飛びあがりました。今夜も山やけの火はまっかです。よだかはその火のかすかな照りと、つめたいほしあかりの中をとびめぐりました。それからもう一ぺん飛びめぐりました。そして思い切って西のそらのあの美しいオリオンの星の方に、まっすぐに飛びながらさけびました。

一串冰冷的东西突然落在了脸上。夜鹰睁开了眼睛,原来是露珠从芒草的一片嫩叶上滴落下来。夜色已深,天空也变成了黛蓝色,满天的星星闪闪烁烁。夜鹰飞向了夜空。今晚的山火依然一片通红。夜鹰在山火微弱的火光和清冷的星光中盘旋一圈,接着又盘旋了一圈。然后就毅然地朝西边那美丽的猎户星的方向径直地飞去了,它边飞边叫着:


「お星さん。西の青じろいお星さん。どうか私をあなたのところへ連れてって下さい。灼けて死んでもかまいません。」

“星星啊星星,西边银白色的星星。请把我带到您的身边去吧。即使烧死,我也心甘情愿。”


 オリオンは勇ましい歌をつづけながらよだかなどはてんで相手にしませんでした。よだかは泣きそうになって、よろよろと落ちて、それからやっとふみとまって、もう一ぺんとびめぐりました。それから、南の大犬座の方へまっすぐに飛びながら叫びました。

  猎户星不停地唱着雄壮的歌,根本不理睬夜鹰。夜鹰急得几乎要哭出来了,摇摇晃晃地掉了下去,后来它好不容易才稳住了,又盘旋起来,这回它一边朝南边的大犬星那里径直飞去,一边叫道:


「お星さん。南の青いお星さん。どうか私をあなたの所へつれてって下さい。やけて死んでもかまいません。」

  “星星啊星星,南边蓝色的星星。请把我带到您的身旁去吧。即使烧死,我也心甘情愿。”


 大犬は青や
むらさきや黄やうつくしくせわしくまたたきながら云いました。

大犬星不断地闪烁出蓝紫黄等绚丽缤纷的光芒,说:


「馬鹿を云うな。おまえなんか一体どんなものだい。たかが鳥じゃないか。おまえのはねでここまで来るには、億年兆年億兆年だ。」そしてまた別の方を向きました。

“你不要说傻话了。你算什么东西,不过是一只鸟罢了。就凭你那双翅膀还想飞到我这里来,起码要花上一亿年、一兆年、一亿兆年。”说完,便把脸转到了别处。


 よだかはがっかりして、よろよろ落ちて、それから又二へん飛びめぐりました。それから又思い切って北の
大熊星おおぐまぼしの方へまっすぐに飛びながら叫びました。

  夜鹰垂头丧气,摇晃着向下坠去,而后又盘旋了两圈。接着,它下定了决心,径直向北边的大熊星那里飞去,一边飞一边叫道:


「北の青いお星さま、あなたの所へどうか私を連れてって下さい。」

  “北边的蓝星星啊,请把我带到您的身边去吧。”


 大熊星はしずかに云いました。

  大熊星座不动声色地说:


「余計なことを考えるものではない。少し頭をひやして来なさい。そう云うときは、氷山のいている海の中へ飛びむか、近くに海がなかったら、氷をうかべたコップの水の中へ飛び込むのが一等だ。」

  “你不要想入非非了,还是让头脑冷静一下吧。这种时候,你最好跳进漂浮着冰山的大海里,如果附近没有海,最好跳进浮着冰块儿的水里。”


 よだかはがっかりして、よろよろ落ちて、それから又、四へんそらをめぐりました。そしてもう一度、東から今のぼった
あまがわの向う岸のわしの星に叫びました。

  夜鹰大失所望,身子摇晃着向下坠去,它又在天空中盘旋了四圈。它再一次向银河对岸那从东方升起的天鹰星叫道:


「東の白いお星さま、どうか私をあなたの所へ連れてって下さい。やけて死んでもかまいません。」

  “东边的白星星啊,请把我带到您的身旁去吧。即使烧死,我也心甘情愿。”


 鷲は
大風おおふうに云いました。

  天鹰狂妄自大地说:


「いいや、とてもとても、話にも何にもならん。星になるには、それ相応の身分でなくちゃいかん。又よほど金もいるのだ。」

  “那怎么行?真是异想天开。要想成为星星,没有相应的身份哪行?另外还要有足够的钱。”


 よだかはもうすっかり力を落してしまって、はねを閉じて、地に落ちて行きました。そしてもう一尺で地面にその弱い足がつくというとき、よだかは
にわかにのろしのようにそらへとびあがりました。そらのなかほどへ来て、よだかはまるで鷲が熊をおそうときするように、ぶるっとからだをゆすって毛をさかだてました。

  夜鹰已经精疲力竭了,它耷拉着翅膀向地面坠落下去。就在它那无力的爪子离地面只有一尺远的时候,夜鹰突然像狼烟一样直冲云霄。飞到了天上,夜鹰简直就像一只老雕袭击熊时一般,抖着身子,羽毛都倒竖了起来。


 それからキシキシキシキシキシッと高く高く叫びました。その声はまるで鷹でした。野原や林にねむっていたほかのとりは、みんな目をさまして、ぶるぶるふるえながら、いぶかしそうにほしぞらを見あげました。

  随后,它发出了嘎嘎嘎的尖叫声,那叫声恰似雄鹰。原野和林子里熟睡的鸟儿们都被惊醒了,大家都疑惑地仰望着星空。


 夜だかは、どこまでも、どこまでも、まっすぐに空へのぼって行きました。もう山焼けの火はたばこの
吸殻すいがらのくらいにしか見えません。よだかはのぼってのぼって行きました。

  夜鹰向辽阔无边的天空一直飞去,山火已经像吸剩下的烟头儿那么大了。夜鹰仍在往高处飞。


 寒さにいきはむねに白く
こおりました。空気がうすくなった為に、はねをそれはそれはせわしくうごかさなければなりませんでした。

  天气太冷了,呼出的气在胸前冻结成一层白霜。空气逐渐稀薄,夜鹰不得不拼命扇动着翅膀。


 それだのに、ほしの大きさは、さっきと少しも変りません。つくいきはふいごのようです。寒さや
しもがまるで剣のようによだかをしました。よだかははねがすっかりしびれてしまいました。そしてなみだぐんだ目をあげてもう一ぺんそらを見ました。そうです。これがよだかの最後でした。もうよだかは落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかも、わかりませんでした。ただこころもちはやすらかに、その血のついた大きなくちばしは、横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらってりました。

  然而星星跟刚才一样大小。夜鹰的呼吸变得急促起来,如同在拉风箱一样。冰冷的寒霜像利剑一样刺在夜鹰身上,它的翅膀已经麻木了。夜鹰睁开噙满泪水的双眼,又望了望天空。是的,这就是夜鹰临终的时刻了。夜鹰已经不知自己是在往下坠还是在向上飞了,也不知自己的头是朝上还是朝下了。不过,此时,它看来很安详,虽然咧开的大嘴沾满血迹,但它的确是在微笑。


 それからしばらくたってよだかははっきりまなこをひらきました。そして自分のからだがいま
りんの火のような青い美しい光になって、しずかに燃えているのを見ました。

  又过了一会儿,夜鹰清醒过来,它睁开了眼睛。它看见自己的身体放射出磷火般美丽的青光,正在静静地燃烧。


 すぐとなりは、カシオピア座でした。天の川の青じろいひかりが、すぐうしろになっていました。

  紧挨着它的仙后座,银河那蓝白色的光芒就在背后闪烁着。


 そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。

  夜鹰之星继续燃烧,永远燃烧。


 今でもまだ燃えています。

  时至今日,仍然在燃烧着。




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